肉食獣になった日
先日、仕事先の歓送迎会があった。六月末というのも結構異動がある。
今いる部署は一癖二癖ある人が多く(人のことは言えんが(^_^; )、会場は御徒町の小さなコリアン料理店。店の中はほとんど日本語が聞こえないようなところだ。そこで羊の串焼きをメインにいろいろと。客連中(私ら)と違って料理の方は癖がなくジューシーで、なかなか美味しい。
で宴も半ば辺りで、管理職のテーブルの方からチンジャオロースーみたいな風情の皿が回ってきた。主に女性に向けて「冷え性にいいよ」とかなんとか言いながら。
まあ会場が会場だったし、私もウブではないのですぐに察しはついた。だがこれも経験だし、こういう状況では乗せられる振りをするのが役どころだろうと。
そういうわけでパクパクいただいてみた(こういう出さなくてもいい要らん漢気だけは持っているのだ(^_^; )。
スパイスが強かったせいもあるだろうが、匂いはほとんど感じなかった。ただ繊維質の食感がやや独特。噛んでいるうちにゆっくりほぐれていく感じだった。たぶん一般的な食肉用動物でも、アキレス腱とかの部位だったら近い感じがするんじゃなかろうか。好きな人は癖になりそうな感じだ(ハラミっぽいかも、と言ってる人もいた。あれも横隔膜だから、分らなくもない)。
全体的に、知らなければそんなに食う人を選ぶ料理ではなさそうだった。やはり何と言っても心理的な抵抗感が、ハードルの高さのうちの圧倒的な割合を占めるだろう。
女性に軽く「食べない?」と振ってみたが、「・・・小さい頃飼っていたので、ちょっと・・・」とのこと。そりゃそうだな、ってキミちゃんと分かってたのね(^^;)。
でビールは当然として、韓国焼酎もちょっといいやつが出てきたのでストレートでそれなりに(一般の人のレベルだと「パカパカ飲んでた」と言われる状態)。
で、お開きになって店を出たのだが、そこで異変が起きた。
雑居ビルの三階の店だったのだが、階段で降りたのかエレベーターで降りたのか記憶がない。そして店の前の路上にいたときのことだ。
理由は分らない。まったく分らないのだが、何かの刺激に反応して、私は突然大声でシャウトした。往来の雑踏の中でである。何かひどいことをされたわけでもないのに。
空に向かって、シャウトしたのだ。ほぼ全力の声で。
「これこれ」とたしなめられると、ますます叫び出す。自分がシャウトしているのは分っていた。ただ、「何を」「なぜ」叫んでいるのかはさっぱり分っていなかった。三回、四回と、盛り場の路上で私は声を張り上げていた。
ご存知の方はご存知だが、私の声は(滅多なことでは出さないが、もし本気で出せば)相当デカい。また自分で言うのもなんだが、声質もよく通る方だ(すぐ枯れるけどね)。それが声を限りに叫んでいるのだ。まだ九時頃だというのに。 しかも歌舞伎町でも新橋でもなく、御徒町でである(笑)。
結局、職場でもガタイがよくて精神的にもしっかりしている人に(はいはい、ここ往来だからねー、駅まで送ってくから)という感じで肩を抱かれ、地下鉄の駅まで連れて行ってもらってそこから帰った。さすがに肩を抱かれてから後は叫ばなかったが。
一体何だったのか、自分でもさっぱり分らない。
そうか。胃袋で消化され始めていた、食べ慣れていない種類の肉が私を肉食獣に変えたのだ(爆)。きっとそうだ!
(まあ牛肉だって豚肉だって食えば肉食のはずだが、一般的な食材だとまだ「雑食」の範囲を出ないような気がする。)
論理的に考えれば、「アルコール」+「複数(相当量)出てきていたスパイス類」の相乗効果によって、一種トリップした状態になっていたのだろう。私の身体は、薬物やスパイスには結構すなおに反応するし。
思い返してみれば、あのときの状態は覚醒剤を使用したタガの外れ方に似ていた。って「何で知ってんねん」だけど、いや知りまへんでマジでマジで。
あ、何その疑ってるような目つき。ちゃうて、「見聞の範囲から推察するに」やがな。
あの異常な高揚感と失見当識具合、インプットされてくる五感への情報が脈絡なくリンクされて、それをそのままアウトプットするものだから、本人以外には統合が失調しているとしか見えない状態。
単に「酒に酔った」だけでは、いくらなんでもああはならない。
薬に手を出したら、間違いなく自分はあんな感じになるだろう、としみじみ思った次第。
反省しましたので、当分酒はストレスのたまらない人としか一緒に飲みません(反省しとらんがな)。
「酔ってダメになる奴は、元々ダメな奴」が身上の私としては、自分のダメさ加減を改めて実感した夜だった(^^;)。なんせ未だにロッド・スチュワートばりのハスキーボイスやし。
しかし今朝は、二日酔いとか体調がとかいう以前に、「恥ずかしくて」仕事場にいくのが嫌だった(^^;)(行ったけどさ)。はぁ・・・スパイスには気をつけよっと・・・。